蚕織錦絵コレクション

故鈴木三郎名誉教授寄贈、博物館所蔵から成る400点余りの錦絵資料。蚕織錦絵は主に蚕の孵化、採桑から製糸、製織、布選びに至る一連を含んでいる組絵や多くの工程を1枚にまとめたものを指しますが、ここでは各作業が単体で制作されたものも含んでいます。
蚕織錦絵の原点は楼璹(ろうちゅう)が南宋の皇帝高宗に献上した「耕篇21景」及び「織篇24景」からなる「耕織図」にあります。これを基に橘守国が描いた「絵本直指宝(ねざしたから)」が制作され、多色刷りの勝川春草と北尾重政による12枚一組の「かゐこやしなひ草」、喜多川歌麿による「女織蚕手業草」へと連なります。さらにこのモチーフは多くの絵師によって明治期まで用いられることで、様々な錦絵の様式を内包し時代ごとに変化に富んだ作品が見られるのが特徴です。
「蚕織錦絵」という用語は製糸学を専門としながら、学生時代より錦絵の収集を続けてきた故鈴木三郎名誉教授によるものです。私家版「絵で見る製糸技法の展開」は種本の引用などを指摘しつつ、近代錦絵の描写や製糸場図面資料、古写真を含めながら江戸期から明治期にかけての製糸技法の変遷について考察しています。

※ ここでは器械製糸など一部派生する資料も含めています。
※ 蚕織(さんしょく)養蚕と機(はた)織り。〔布令必用新撰字引(1869)〕 〔詩経‐大雅・瞻仰〕